雪月占花_心々の『楽書記』

地球の不可思議を楽しみゆるく暮らすためのメモ

天才空海の「三教指帰(さんごうしいき)」二冊を比較

本日は、空海三教指帰」の訳&解説書として出版されている2冊の本を比べつつ『楽書記』。

 

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「三教指帰」とは?ザックリ説明

岩波文庫版(1989)と角川ソフィア文庫版(2007)を比較

空海が賞賛していた書家のメモを

 

三教指帰(さんごうしいき)」とは、仏教・儒教道教を比較して、仏教が最善の教えであることを説いた、空海が24歳の時に書いた宗教的小説。

司馬遼太郎氏が「空海の風景」

空海だけが日本の歴史のなかで民族社会的な存在ではなく人類的な存在だったということがいえるのではないか。—132ページ

と、空海の印象を書いている。そんなことを思い出したながら考えてみると、儒教孔子が人間が形成する組織サイズで使える宗教であり、道教老子が地球上で暮らす人間サイズで使う宗教であり、仏教は宇宙の中の一つの星に存在する人類サイズで使う宗教であると思った。

 

今回比較したのは、2007年に出版された角川ソフィア文庫ビギナーズシリーズの「三教指帰」と、1989年に出版されたの岩波文庫の「三教指帰」の二冊。結論から申し上げると、古文漢文が出来ない私は最初からビギナーらしく角川ソフィア文庫ビギナーズの方を読めばよかった。1989年岩波文庫の方はいきなり読んでも書いてる内容がさっぱり分からない。当たり前ながら現代語訳ではないので、角川ソフィアのビギナーズの方を読み終えてから読んで初めて、ようやく書いてある内容が分かった。空海が同じ日本人だからと言って、彼の書いた言葉をそのまま私が受け取れるハズもなかった。

 

実際に一文を記載して、それぞれの本を比較してみる。例えば、この原文

「進退両間 何夥歎息」は、

 

角川ソフィア文庫ビギナーズだと

「進むと退くの両の間に嘆息し苦悶し続けています」

と記されているし

 

1989年岩波文庫では

「進退両の間何ぞ歎息すること夥しき」

と記され、その後に、各単語の意味などを載せた註釈が入れられている。

 

そして、1989年岩波文庫の方では、最後に原文を掲載していて、この一文だと

「進退両間 何夥歎息」と記されている。これをそのまま筆文字にしたものを空海が書いたと思うと感慨深いし原文を見られるのは嬉しいけれど、原文の読解力がゼロで、なんとかしようとする覚悟もない私には必要なかった。

ちなみに、角川ソフィア文庫ビギナーズの方は、後半に原文ではなく訓み下し文を掲載していて、この一文だと

「進・退・両つの間、何ぞ歎息することの夥しき。」と記載されている。

この印象深い台詞「進むと退くの両の間に嘆息し苦悶し続けています」を記したのは空海が24歳の頃で、空海にもそんな風に感じる瞬間があったのかと思うと、ちゃんと存在した人なんだなと思えた。最後に掲載されている、空海略伝も非常に面白かった。

 

そして、面白いのは翻訳されている方々が、1989年岩波文庫が加藤精神氏、角川ソフィア文庫ビギナーズが加藤純隆氏、加藤精一氏というトコロ。三世代で空海につきっきりという素晴らしさで、精一氏の祖父が精神氏。

 

最後に、空海が称賛していた書家をメモしておく。鍾繇(しょうよう)、張芝(ちょうし)、王羲之父子、欧陽詢父子。

 

今回、どちらも図書館にあったのでお金を掛けずに読ませて頂きました、謝謝。ちなみに、角川ソフィア文庫ビギナーズの方は、KindleUnlimited会員だと無料で読める、相変わらず網羅がエグいな、結局、そろそろ会員をやめようかと思う度に何かしら無料本を見つけて、KindleUnlimited会員を辞められないでいる、私。