雪月占花_心々の『楽書記』

地球の不可思議を楽しみゆるく暮らすためのメモ

大乗仏典の中の二経典、中村元「維摩経 勝鬘経」

本日は、あまりに広大な内容であり経典量を誇る大乗仏典に分類される2つの経典を訳し解説した本、中村元「『維摩経(ゆいまきょう)』『勝鬘経(しょうまんぎょう)』」を『楽書記』。

 

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大乗仏典とは?本書をザックリ説明

「『維摩経』『勝鬘経』」本書よりフレーズ抜粋

初心者(私)は「維摩経」の前に「般若経」だった

 

そもそも大乗仏教とは「大きく立派な乗り物」と言う意味を持つ「大乗」からも分かるように、仏陀の真意をより深くより自由に解釈しようとしていて、その大枠的な意味もあってか経典の量もかなり多く、代表的な経典だけでも、般若経法華経華厳経維摩経、宝積経、浄土三部経などが挙げられる。その中でも、大乗仏典として最初に世に出たのが「色即是空 空即是色」でお馴染みの『般若経』。尚、日本で成立した仏教の各派は、例えば天台宗日蓮宗が「法華経」を元にしているように、ほとんどこの大乗仏典に基づいていると言えるそう。

 

そして今回読んだ本では、この大乗仏典の中から「維摩経」と、「宝積経(ほうしゃくきょう)」の四十九ある経典の中の、四十八番目にあたる「勝鬘経」の二経典を訳し解説した本。これらが背幅1.5cmほどの一冊の本に収められているのは有難い。ページ数が少なく行間隔もしっかりあって、流石の私でも最後まで読み切れる仕様。

それぞれの概要としては、「維摩経」では病気をテーマとして維摩吉と言うお金持ちの俗っぽい主人公が、僧侶などをからかいながら物語調に話が進んでいく。また「勝鬘経」では国王の妃で在家信者である勝鬘夫人を主人公とし、彼女が仏と対話している様子が描かれている。

 

「維摩経 勝鬘経」本書よりフレーズ抜粋

如来蔵は生まれることもなく、あるいは老いることもなく、あるいは死ぬこともなく、あるいは滅びることもなく、あるいは生起することもありません。by 勝鬘経─ 143ページ

 

この身には主人がありません。地のようなものです。この身には我がありません。火のようなものです。この身には生命がありません。風のようなものです。この身には人格主体がありません。水のようなものです。この身は実態ならざるものなのです。この身は空であり、我(が)と我(わ)がものとを離れています。by 維摩経─ 168ページ

 

いま我が受けるこの病はみな、前世の妄想・顚倒・もろもろの煩悩から生じたものであり、実体としては存在しない。by 維摩経─ 198ページ

 

仏は、一切のものは男に非ず、女に非ず、と説きたもうたのです。by 維摩経218ページ

 

人の心は導き難いもので、まるで猿がとびまわるようなものであるから、いろいろのしかたでその心を制御し、ととのえるべきです。by 維摩経─ 240ページ

 

今回、仏教の経典を何か読んでみたいと思って色々探しているうちに「維摩経」を発見しその別名が「不可思議解脱経」と言う名前なのを知って面白そう!と思いこの本を手に取ったけれど、結論としては「維摩経」はおいておいて、初心者はまず大乗仏典のはじまりであり中心ともいえる「般若経」を探索すべきだったという本の感想ではない、感想に落ち着いた。当たり前ながら、この本では大乗仏教の全体像は掴めないし、「般若経」をある程度読んでからの方が、この「維摩経」のからかい皮肉った雰囲気を楽しめると思う。ひとまず先日華麗に挫折した、中央公論社の分厚い世界の名著シリーズ「大乗仏典」をトライしよう。